相続税対策
自分が築いた財産や会社を、無駄なくスムーズに受け継がせたい…。これは創業社長や企業経営者の多くが考える事柄ではないでしょうか。このとき、壁になるのが「相続税」です。相続税対策を怠ったばかりに、大切な資産や事業の承継に失敗した、という例は少なくありません。では、経営者・創業社長が考えるべき相続税対策にはどのようなものがあるのでしょうか。株価対策を交えながら紹介します。
経営者、創業社長のための相続税対策とは
経営者や創業社長が考慮すべき相続税対策としては、以下のようなものがあります。
一般的な相続税対策
不動産の節税対策
- ・不動産の節税は「小規模宅地等の特例」の活用
- 小規模宅地等の特例を活用すれば、不動産評価額を低く抑え50%~80%まで節税できる可能性があります。事業用不動産であっても適用対象です。
- ・賃貸物件の活用
- 土地は、更地よりも建物付きのほうが評価額は下がるため、相続税の節税に役立ちます。
- ・空き家の賃貸物件化
- 相続財産に空き家が含まれるときは、賃貸物件にすることで評価額を3割近く引き下げ、相続税を節税できるかもしれません。
- ・現金化による節税
- 相続予定の現金預金等で不動産を購入し、前述のような評価額対策を施すこともおすすめです。現金は額面通りに評価されてしまうため、評価を低くしやすい不動産に変換して節税する、という方法になります。現金から不動産に資産を変化させれば、土地は約2割、建物は約3割の評価額減が見込め、結果的に相続税の節税につながります。また、専門家のサポートが必要なものの「土地を分割した相続」や「広大地としての評価」なども有望です。
贈与を利用した相続税対策
- ・暦年贈与
- 1年間(毎年1月1日から12月31日)に贈与された財産が110万円未満の場合、贈与税の課税対象とならないことを利用して生前贈与を行い、相続財産の課税対象を減らしていく方法です。相続税対策として良く知られていますが、逆に言えば、税務署の指摘を受けやすい方法とも言えます。弁護士など、専門家のアドバイスのもとで実行すべきでしょう。
- ・相続時精算課税制度
- 2500万円までの贈与が特別控除により非課税になる制度です。ただし、「相続財産の前渡し」的な性質が強く、中長期的には節税にならない可能性もあります。将来的に値動きが予想される財産(土地や株券など)の節税対策として有効です。
- ・贈与税の配偶者控除
- 贈与税では、一定の条件を満たしたとき、最大2000万円の配偶者控除枠が認められています。ちなみに、1年間の控除(110万円)とは別枠となるため、是非活用したいところです。
- ・結婚・子育て資金贈与による節税
- 直系尊属(父母や祖父母など)から、子の結婚・子育て資金の贈与には最大1000万円の控除枠が設けられています。専用口座の開設、振り込み、領収書の提出などの要件がある上に、子の年齢に制限(20歳以上50歳未満)があるため、こちらも専門家のサポートを受けていきましょう。所定の要件を満たす必要があります。
- ・住宅取得資金贈与による節税
- 直系尊属(父母や祖父母など)から、子や孫に居住用家屋の新築、増改築資金の贈与にも最大3000万円の控除枠が設けられています。ただし、以下のような要件を満たすことが求められます。
- ・2019年6月30日までに行われた贈与であること
- ・贈与者が直系尊属であること
- ・受贈者(贈与を受ける者)が20才以上、かつ、所得が2000万円以下
- ・居住物件の床面積が50~240平方メートル、かつ、床面積の1/2以上が居住用であること
教育資金贈与による節税
直系尊属(父母や祖父母など)から、子や孫に対する教育用の資金を贈与にも最大1500万円の控除枠があります。
- ・2019年3月31日までに行われた贈与であること
- ・贈与者が直系尊属であること
- ・入学金、授業料、学習塾、その他習い事の月謝などにかかる費用であること
- ・教育資金用の専用口座を開設し、振り込むこと
- ・金融機関経由で税務署に申告すること
非課税財産の購入による節税
墓地、仏壇といった「祭祀財産」は、相続税法で非課税となるため、節税対策になります。
生命保険の非課税枠による節税
「500万円×法定相続人の数」が非課税枠として設けられています。
自社株式評価額への対策も必須
創業社長やオーナー社長であれば、これら一般的な相続税対策の他に、「株価対策」も重要になってきます。会社保有の自社株式は相続税の課税対象ですから、評価額をできるだけ引き下げることで、相続税を節税できるのです。株価の評価額対策としては、以下のようなものがあります。
- ・赤字会社(赤字事業)との合併
- ・高収益事業の分社化と切り離し
- ・役員退職金の支給
- ・従業員持株会の活用
- ・不良資産の売却による含み損吐き出し
- ・外部機関(投資育成会社など)からの出資受け入れ
- ・持ち株会社の活用と2つの株価算定方法(類似業種比準価額」「純資産価額」)を考慮した対策
これらはいずれも、自社株式の評価額を下げる効果が見込め、自社株式の株価を数分の1程度に抑えられる可能性すらあります。特に「持ち株会社の活用と株価算定方法対策」は、事業承継の基本として知られているため、ぜひ検討してみてください。事業承継の知識・ノウハウを持った弁護士への依頼がおすすめです。