日本の法律問題解決します

弁護士法人 東海総合

土曜日・夜間も相談対応

 052-232-1385

受付時間 9:00~18:00(平日)

 お問い合わせ

相続は「亡くなった方の遺産を受け継ぐもの」と考えられています。確かにそのとおりなのですが、受け継ぐものは「プラスのものだけとは限らない」ことをご存じでしょうか。
つまり、「借金や負債など”マイナスの遺産”」も受け継ぐことになるのです。しかし、問答無用でマイナスの遺産を受け継がなくてはいけないわけではありません。手続き次第で「マイナスの遺産を含めてなにも受け取らない」ことや「マイナスにならない範囲で受け継ぐ」ことも可能です。ここでは、こういった遺産のかしこい受け取り方や、注意点について解説します。

 

全ての遺産を受け取らない「相続放棄」

相続放棄は、「借金や負債を含む、すべての遺産を受け取らない」という選択肢です。民法の939条にその内容が記されています。

“第939条(相続の放棄の効力)
相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。”

例えば、亡くなった方の遺産として、次のようなものがあるとしましょう。

  • ・2000万円の不動産
  • ・300万円の動産(自動車など)
  • ・預貯金500万円
  • ・金融機関からの借金3000万円

全てを受け継ぐとなると、「2000+300+500-3000=-200万円」になります。これではプラスの遺産を売却して相殺したとしても、結果的にはマイナスですよね。
このように、明らかにマイナス分が上回るとわかっているときは、相続放棄を選択したほうが良い場合もあります。
 

相続放棄のやり方

相続放棄は、次のようなステップで行います。
 

1.相続放棄申述書および添付書類を家庭裁判所に提出

相続放棄申述書は、家庭裁判所で受領するか裁判所のホームページからダウンロードすることで入手可能です。
規定のひな型があるため、基本的にはそのひな型に従って記述すれば問題ありません。ただし、20歳以上と20歳未満でフォーマットがやや異なります。
また、添付書類として以下のものが必要になることもあります。収入印紙800円分や切手とともに準備しておきましょう。

  • ・被相続人の住民票除票
  • ・申述人の戸籍謄本
  • ・相続人との間柄によって追加書類が必要(戸籍謄本など)

 

2.家庭裁判所からの照会

相続放棄申述書を送付すると、家庭裁判所から申述人宛に「照会書」が送付されます。
この照会書には「被相続人(亡くなった方)の死亡を知った時期」「相続放棄が自らの意思であることの確認」「相続放棄を選択する理由」「遺産の使い込みがないか」などが記載されています。素直に記述して返信しましょう。
 

3.家庭裁判所が相続放棄を受理(相続放棄受理通知書の交付)

家庭裁判所が相続放棄を行っても問題無いと判断すれば、「相続放棄受理通知書」が送られてきます。ただし、相続放棄受理通知書は相続放棄の事実を示すものではありません。あくまでも「あなたが相続放棄の意思があることを確認しましたよ」ということを証明する書類です。
 

4.相続放棄受理証明書が交付される

これは任意ですが、家庭裁判所から「相続放棄受理証明書」を発行してもらえます。ただし、手数料として150円程度の収入印紙が必要です。
 

相続放棄の期限

相続放棄には「3ヶ月」というタイムリミットがあります。専門的な言葉で「熟慮期間」と呼び、民法の第915条に規定があります。

“第915条 (相続の承認又は放棄をすべき期間)
1.相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
2.相続人は、相続の承認又は放棄をする前に、相続財産の調査をすることができる。”

もし熟慮期間内に相続放棄の手続きを行わなければ、通常の相続(単純承認=亡くなった方の遺産を全て受け継ぐ方法)を選択したとみなされる可能性があるため、できるだけ早急に対応したいところです。
 

3ヶ月を経過したら相続放棄はできない?

結論から言うと、「熟慮期間の延長」が可能です。前述した民法915条の但し書きにもあるように、熟慮期間は事情に応じて「伸長(延ばすこと)」が可能です。相続財産調査や相続財産の価値の計算などでどうしても間に合わない場合は、家庭裁判所に申し立てることで熟慮期間を延長できます。不動産や株式など、価値の把握に時間がかかるような財産が多い場合におすすめです。
 

取引期間が長い借金の相続放棄は注意!

相続放棄は無くなった方の借金も放棄できます。しかし「取引期間が長い場合(10年~15年など)」は要注意です。なぜなら、利子の引き直し計算を行った結果、すでに借金が完済されているばかりか「過払い金」が発生している可能性があるからです。こういったケースでは、すぐに相続放棄を行わず、単純承認や相続放棄期間を伸ばす申立てを行い、本当にマイナスの遺産なのかを判断すべきです。

遺産の総額や内訳が把握しきれないなら「限定承認」

限定承認は「マイナスの遺産がプラス分を超えない範囲で相続する」という制度です。借金額がいくらかわからないので、マイナスにならない範囲で相続したい、という方は限定承認が適しているでしょう。民法第922条に規定があります。

“第922条(限定承認)
相続人は、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して、相続の承認をすることができる。”

プラスの遺産が不動産や預貯金などを含め、3000万相当あるとしましょう。これに対し、マイナスの遺産としていくつかの借金・負債があることはわかっているものの、全容がはっきりしないような場合があります。このような場合、限定承認を選択して以下のような処理が可能です。

  • ・仮に借金が3000万円以下の場合は、プラスの遺産で相殺し、残りを相続する
  • ・3000万円を超える借金があった場合は3000万円分までを相続し、それ以上の借金は相続しない

このように、限定承認を選択すれば「最悪でもゼロ」という状態に持っていくことができます。こちらも相続放棄と同様、相続開始から3か月以内に手続きするのが原則です。

 

便利な制度だけに慎重さが大切

ここで紹介した2つの手続きは、どちらも残された人間の生活を守るために役立ちます。特に限定承認は、使い方によってはとても便利な制度だといえるでしょう。それだけに、手続きの進め方には慎重さが求められます。

例えば、「勝手に遺産を処分(換金など)した」「特別な事情が無いのに3か月以上経ってしまった」「手続き後に背信的な行為があった」といったケースでは、相続放棄や限定承認ではなく「単純承認(通常の相続)」とみなされる可能性もあるのです。高齢者の遺産の借金を本人の預貯金から勝手に返済したり、価値の高い形見を受け取ったりせず、まずは専門家へ相談することをおすすめします。

遺産分割・生前対策法律相談お問合わせ

まずはお気軽に、お電話またはフォームよりお問い合わせください。