相続問題を解決する名古屋の弁護士法律事務所

弁護士法人 東海総合

土曜日・夜間も相談対応

 052-232-1385

受付時間 9:00~18:00(平日)

 お問い合わせ

相続放棄はどこまでやるべき?

先日、「相続放棄について、全員でしなければならいないと聞いたのですが、どのようにすればよいのでしょうか?」というご相談をいただきました。

 

そこで、本稿では、相続放棄の範囲について解説したいと思います。

 

1 相続放棄とは

 

相続放棄とは、被相続人の残した財産(遺産)の一切を相続しない手続きのことをいいます。

 

相続放棄をすると「初めから相続人でなかったものとみなされ」ますので、借金などのマイナスとなる財産の相続を免れることができますが、預貯金や不動産などのプラスとなる財産についても相続できなくなりますので、注意が必要です。

 

つまり、相続放棄は、マイナスの財産が非常に多く、プラスの財産を相続したとしても損が出るような場合に選択されるものといえます。

 

ただ実際には、今の生活で満足しているから特に遺産は要らないとか、生前仲が良くなかったので相続だけはしたくない、といった理由で相続放棄をされる方もいらっしゃいます。

 

2 法定相続人の順位

 

では、そもそもどの範囲で相続がされるのでしょうか?

 

まず、民法上「配偶者」は必ず相続人となるものとされています。

 

次に、第1順位が「子」、第2順位が「直系尊属」(父母や祖父母)、第3順位が「兄弟姉妹」となっています。

 

さらに代襲相続といって、被相続人の死亡以前に、子や兄弟姉妹が死亡または欠格(遺言書の偽造や被相続人への虐待などによって相続人たる地位を失うこと)している場合には、それらの子が「代襲相続人」として相続をすることができます。いわゆる「孫」や「甥」「姪」が相続する場合です。

 

また「孫」も被相続人の死亡以前に死亡していた場合には、「ひ孫」が「再代襲相続人」として相続をすることができます。これに対し、「甥」や「姪」の子については再代襲が認められていませんので、注意が必要です。

 

簡単にまとめると、まずは①配偶者、次に②子(死亡または欠格の場合には③孫、④ひ孫)、⑤直系尊属、⑥兄弟姉妹(死亡または欠格の場合には⑦甥姪)という順番となります。

 

3 相続放棄の範囲

 

では、相続放棄は①〜⑦のどこまでやる必要があるのでしょうか? 以下、順番に見ていきましょう。

 

⑴ まず、①配偶者が相続放棄した場合は、その他の相続人に相続権が移ることはありません。

 

⑵ 次に、②子が相続放棄した場合も、③孫や④ひ孫に相続権が移ることはありません。

 

⑶ ②子が全員相続放棄すれば、その相続権は被相続人の父母(⑤)に移ります。つまり、相続放棄による相続権の移譲は、下(子)には行かないけれども、上(直系尊属)には行くことになっています。

 

⑷ 被相続人の父母(⑤)が相続放棄した場合、祖父母(⑤)が存命であれば、祖父母に相続権が移ります。

 

⑸ 祖父母がいないか相続放棄した場合には、⑥兄弟姉妹(被相続人の死亡以前に亡くなっていた場合には、⑦甥姪)に相続権が移ります。

 

⑹ ⑥兄弟姉妹が相続放棄した場合、相続放棄による相続権の移譲は下(子)にはいきませんので、⑦甥姪に相続権が移ることはありません。

 

同じく、⑦甥姪が代襲相続をした場合で、その甥姪が相続放棄をしたとしても、甥姪の子には相続権が移りません。

 

実際に冒頭のような相談がきた場合には、相続関係図を書きながら、以上の⑴〜⑹の順に相続放棄が必要となる範囲をひとつひとつ確認することになります。

 

4 おわりに

 

以上、相続放棄の範囲についてみてきましたが、抽象的過ぎてよくわからないと思った方もいらっしゃると思います。

 

それぞれの家族関係によって相続放棄をすべき範囲は異なってきますし、そもそも相続人がどれだけいるのかも把握できていない場合も多々ございます。

 

相続人の数が多すぎて相続関係図を書けないので相続調査をしてもらいたい、自分で関係図を書いても放棄の範囲がよくわからないという方は、是非一度ご相談にお越しください。

 

令和2年11月24日

 

弁護士法人東海総合

弁護士 小山 洋史

その他のコラム

『異母兄弟・異父兄弟も相続人?(その2)』

以前、本HP上に異母兄弟・異父兄弟の相続分等についてのコラム(https://tokai-e-souzoku.com/column/277/)を掲載させていただきましたが、今回は同コラムの第2弾となります。 近時、相談者の方から弊所に寄せられる異母兄弟・異父兄弟との間の相続紛争相談の中で、とりわけ多いのが、「親が亡くなり戸籍を調べたところ、異母兄弟・異父兄弟の存在が発覚した。遺産協議に参加させなければならないのか?」とい...

寄与分はいかにして認められるのか ~あんなにお世話してあげたのに!

1 相談事例 先日、祖父が亡くなりました。祖父は昔から体調が悪く、生前はわたしの母がずっと身の回りの面倒を見ていました。 それなのに、たまにふらっと顔を見せるだけだった叔父が、「俺が長男なんだから、遺産を分けるときには、もっと配慮してもらわないと困る」と言って、半分ずつ分けようという母の提案を受け入れてくれません。 聞いたところによると、寄与分というものも請求できるらしいとのことですが、わたしたちは今後どうすればよいので...

継世代への成功戦略

法務・会計専門家集団による本質を見極めた対応 日経MOOK掲載 望みを叶える相続・事業承継“相続・事業承継により家族や企業の希望を叶えたい”、そんな想いから、当事務所では関係者の方の望みを実現するための支援をしています。 親、子、先代・後継者、関係者の希望・要望が絡みあい一筋縄ではいかない相続・事業承継では関係者の真の願いを紐解き、望みを実現する対策が重要です。 当事務所では、①依頼者等から要望を聞き、②法務・税務...

第4章 遺言がある場合の相続手続についてーその1

1 遺言について  遺言(いごん)は「人が死後のために残す言葉」という意味に用いられておりますが、法律的には、「財産の処分方法や認知などの身分関係に法的に効力を生じさせる目的で、一定の方式に従って行う意思表示」という意味があり、次のような7種の方式があります。 検認手続きについて、封印のある遺言は、偽造等を防ぐために、家庭裁判所において、相続人またはその代理人の立会がなければ、開封できません。勝手に開封してしまうと過料に処...

日本経済新聞 事業継承M&A 弁護士50選

親族以外への継承も有力な選択肢となる。 事業承継Ⅿ&A 弁護士50選 相続にも事業継承に纏わる問題が起きてきますが、「継世代と考える成功戦略」としてご紹介されております。 相続に関する問題などお気軽にご相談ください。 お問い合わせはこちらから ...

遺産分割・生前対策法律相談お問合わせ

まずはお気軽に、お電話またはフォームよりお問い合わせください。