相続問題を解決する名古屋の弁護士法律事務所

弁護士法人 東海総合

土曜日・夜間も相談対応

 052-232-1385

受付時間 9:00~18:00(平日)

 お問い合わせ

自分でもできる相続調査

一般的に誰かが亡くなると、葬儀の手配や遺品の整理のほかに「誰が相続財産を受け継ぐのか」「相続財産はどれくらいあるのか」といった調査が必要になり、これを「相続人調査」、「相続財産調査」と呼びます。

近年は相続についてのマニュアル本も複数出版されており、「戸籍の取寄せは自分でしてきたので、これからどうすればよいのか教えて欲しい」と相談にいらっしゃる方もいます。

 

そこで、本稿では、相続人調査・相続財産調査を中心に解説を加えます。

 

1 相続人調査

 

相続人調査とは、「誰が相続人なのか」を確定させるための調査のことをいいます。

 

この調査は、①遺産分割協議を行うため、②金融機関等に対して相続関係を証明するために必要となります。

被相続人(亡くなった方)の財産(遺産)は、まず「相続人の共有財産」になり(遺産共有)、次に相続する権利を持つ者の間で分割されます(遺産分割)。

遺産分割においては、相続人全員の合意がなければ確定せず、たとえ合意があったとしても、相続人が一人でも欠けていれば、合意は「無効」となってしまいます。

このような事態を回避するために、相続人調査によって誰が相続人なのかをはっきりさせた上で、被相続人と相続人の間柄(相続関係)を証明し、相続手続きのベースを作る必要があるのです。

 

反対に、相続人調査を行わないと、次のような問題が発生しえます。

・ 愛人、内縁の関係にあった人物、その子どもなど法律婚の外にある人間関係を把握できない。

・ 被相続人が実は複数回結婚しており、「元配偶者との間に子どもがいた」場合など、予期しない相続人の増加が起こる。

・ 被相続人が一部の相続人に内緒で養子縁組などを行っており、遺産分割に支障が出る。

・ 子がすでに死亡している場合などで、代襲相続者が誰なのかはっきりしない。

 

2 相続人調査のポイント

 

相続人調査では、「戸籍の収集」と「戸籍の調査」が主な作業内容となります。

もっとも、戸籍は年代によって形式が異なる上、記載方法にもバラつきがあります。これらをしっかりと理解した上で、戸籍の収集と調査をしなければなりません。

特に注意すべきポイントとしては、次のものが挙げられます。

 

【戸籍の種類】

戸籍は、①「原戸籍」、②「除籍」、③「現在戸籍」の3種類に分類できます。このうち、一般的に戸籍と呼ばれているのは「現在戸籍」です。

ちなみに、除籍は「死亡や結婚、転籍で閉鎖された戸籍」、原戸籍は「法改正前に使われていた古い戸籍」と理解しておけばよいでしょう。

相続人調査では、これら全ての戸籍(謄本)を集める必要があります。

 

【戸籍の形式や記載方法の違い】

戸籍は年代によって形式や記載方法が異なります。例えば、

・ 明治19年式戸籍

・ 明治31年式戸籍

・ 大正4年式戸籍

・ 昭和23年式現行戸籍

・ 電子化された現行の戸籍

に分類でき、それぞれの形式で記載の内容や方式が異なります。

 

【判読しにくい戸籍がある】

特に年代がさかのぼる程、手書き形式の戸籍は非常に判別が難しくなります。

例えば、明治や大正時代に作成された戸籍は、手書きかつ「毛筆体」となっており、一般の方では判読できないこともあります。

 

【戸籍収集自体の手間が大きい】

戸籍収集では、相続人全員の戸籍謄本に加えて「被相続人の『出生から死亡まで』の全戸籍」が必要となります。出生から死亡までの全戸籍を収集するには、複数の自治体、役場に赴いて戸籍謄本を集めなくてはならない場合があります。

また、戸籍謄本を請求できるのは、「戸籍の構成員」か「直系親族」のみとなっていますので、誰もが簡単に行えるものではありません。この点、弁護士ならば職権で戸籍謄本の取寄せが可能です。

 

【相続関係説明図の作成が難しい】

相続関係説明図は、被相続人と相続人の相続関係を証明し、相続手続きの土台にするための資料です。

また、相続登記を法務局で行うためには、大量の戸籍謄本を法務局に提出する必要がありますが、相続関係図があれば原本還付という手続きで戸籍の返却が受けられます。

 

3 相続財産調査

 

次に、相続財産調査について解説します。

 

相続財産調査は、財産がある場所、量、形式を調べる作業です。遺産相続には「相続税」がかかることもありますので、納税額を確定させるためにも相続財産調査は早急に行うべきです。

相続財産調査には、①相続財産の有無の調査、②遺産の評価の2つの手続があります。

 

【相続財産の有無の調査】

遺言書や金融機関の口座などを調査しながら、単純に「財産がどこにどれだけあるか」を把握します。

 

【遺産の評価】

財産の「価値」を算出します。価値がわからなければ、遺産分割や納税額の計算が進まないため、非常に重要な手続きといえます。不動産や金融などの複数の専門知識が求められるため、専門家の協力が必須となってきます。

 

4 相続財産調査のポイント

 

相続財産調査を進める際には、次のポイントに注意すべきです。

 

【遺言書の有無】

遺言書には、財産に関する記載がなされている場合があります。遺品整理で遺言書が見つかることもあれば、公証役場に保管されている可能性もあります。遺言書は相続手続きにおいて非常に重要な書類となりますので、まずは遺言書の有無から確認しましょう。

 

【みなし相続財産】

本来は被相続人(亡くなった方)の財産といえないものの、亡くなったことにより発生する財産を「みなし相続財産」といいます。死亡保険金や死亡退職金などがこれに当たります。

みなし相続財産は、相続税の加算対象になるため、必ず調査しておく必要があります。

 

【相続財産目録の作成】

相続財産目録は、相続財産がどのような形でどれだけあるかを一覧にまとめた書類です。

法的に作成が義務付けられているわけではありませんが、相続税の申告や円満な遺産分割のために必要な書類となります。相続財産を誰もがわかるように一覧にまとめておくことで、相続人同士の話合いや他者への説明がスムーズになります。

 

【マイナス(負)の財産の把握】

相続財産調査では、「プラス(正)の財産」(積極財産)だけでなく、「マイナス(負)の財産」(消極財産)の両方を調べることを忘れてはいけません。

借金等の負債が隠れている場合で、マイナスの方が大きくなるような場合には、相続人は「限定承認」や「相続放棄」を選択し、遺産を受け継がないという選択もできます。

 

5 まとめ

 

以上見てきたように、相続では「人」と「財産」に関する調査に多くの手間と労力がかかります。

 

頻繁に発生するような作業ではありませんから、ほとんどの方が初めての経験になるでしょう。また、高齢の両親や祖父母が亡くなった直後で、理路整然と情報を整理できない可能性もあります。

 

しかし、これらは相続には欠かせない作業といえますから、面倒であれば専門家へ託してしまうのもひとつの解決策といえますので、本稿を見て気になった方は、ぜひ一度ご連絡ください。

 

令和3年2月15日

弁護士法人東海総合

弁護士 小山 洋史

その他のコラム

弁護士久野実のリーガルラボ

弁護士久野実が、皆様のイノベーションにつながる情報を、ラジオパーソナリティーの川本えこさんとわかりやすくお伝えしていく番組です。 毎月第1、第3木曜日に更新予定! > Apple Podcast...

忘れてはいけない相続税~その1

相続を語る上で外せないのが「相続税」です。 相続税については一定の控除額が認められていますので、実際には相続税の納付が必要ないかた大半です。 もっとも、仕組みを理解しておくことで、納税の要否を見通せるようになりますので、数字が苦手な方も少しだけ我慢して読み進めてみてください。 1 相続税とは   相続税とは、「相続税法」に基づき課せられる税金です。   人が亡くなって財産の移転が行われると、その財産を受け...

自分でもできる相続調査

一般的に誰かが亡くなると、葬儀の手配や遺品の整理のほかに「誰が相続財産を受け継ぐのか」「相続財産はどれくらいあるのか」といった調査が必要になり、これを「相続人調査」、「相続財産調査」と呼びます。 近年は相続についてのマニュアル本も複数出版されており、「戸籍の取寄せは自分でしてきたので、これからどうすればよいのか教えて欲しい」と相談にいらっしゃる方もいます。   そこで、本稿では、相続人調査・相続財産...

継世代への成功戦略

法務・会計専門家集団による本質を見極めた対応 日経MOOK掲載 望みを叶える相続・事業承継“相続・事業承継により家族や企業の希望を叶えたい”、そんな想いから、当事務所では関係者の方の望みを実現するための支援をしています。 親、子、先代・後継者、関係者の希望・要望が絡みあい一筋縄ではいかない相続・事業承継では関係者の真の願いを紐解き、望みを実現する対策が重要です。 当事務所では、①依頼者等から要望を聞き、②法務・税務...

相続法改正による配偶者保護⑷~配偶者居住権(その2)

前回コラムに引き続き、配偶者居住権の要件と効果、そして配偶者居住権を活用した相続税対策についてお話します。   1 配偶者居住権の要件   配偶者居住権が認められるためには,以下の要件を満たすことが必要です。   ⑴ 被相続人の配偶者であること(1028条1項本文) ⑵ 相続開始時に被相続人所有の建物に居住していたこと(本文) ⑶ 被相続人が居住建物...

遺産分割・生前対策法律相談お問合わせ

まずはお気軽に、お電話またはフォームよりお問い合わせください。